カジノにはあまり関係ない衝撃の問題作!

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 「吉田たけし29歳の場合」
 
 
「やっぱりスロットにしておくべきだった。」

たけしは、もう何度通ったか分からない階段を、何度言ったのか分からない言葉を口にしながら降りていった。

今日は行きつけのパチンコ屋の新装開店2日目、新しいスロットが入ったと聞き、仕事が終わって、まずパチンコ屋を覗いてみたが、案の定新台は満席だった。

5時過ぎに行って、新台に座れるはずなど無いことはたけしにも分かっていた。おとなしく帰るか、他の台を打てばいいものを、いつもの悪い癖が出てしまった。

「いや、あの時の4カードでもう1度ダブルアップが成功してたら今日はプラスで終わったはずだ」

仮に成功してたとしても、そこでやめる勇気など持ち合わせていないことなど、たけしだって知っている。

いつものATMで、都合4社目のカードを満額まで借り切ったたけしはそう言い捨てた

ギャンブルといえばスロットだけだった

持ち前のマメな性格で、攻略雑誌をかたっぱしから読みあさっていたおかげかどうか、収支はそれなりにプラスだったはずだ

そんな、いつも財布にはある程度のお金を入れておく主義のたけしがそのお店に通うようになったのは、たぶん半年前からだ

1年半前の結婚を機に引っ越しした為、オフィスの最寄駅に止まるJRで通えなくなった

しょうがなく私鉄の駅から、オフィスまで歩いて通勤した

オフィスまで徒歩20分。

たけしはいつもの道にある10円マークの看板が少し気になっていた

あれは一体何のお店だろう

そんなある日、たけしは会社で後輩の一人が同僚に自慢げに話しているのを聞いてしまう

「昨日10円ポーカーで30万だよ、30万。」

おそらくは30万円負けたのではなく、勝ったことぐらい、話し振りからわかる

問題は10円ポーカーなるものである

たけしがその単語と通勤途中にある10円マークの看板を結びつけるのに時間はかからなかった

それが、たけしと10円ポーカーの出会いである

それ以来、週に3日は通っている

当然収支は大赤字だ

すでに4枚、自動契約機でつくったカードを持っている

定期はとっくに解約した

とうとう嫁さんにも借金がばれた

根が素直なたけしは独身時代からのヘルス通いも白状してしまい

今は離婚調停中だ

嫁さんは生まれたばかりの赤ちゃんといっしょに実家に帰っていった

「これから不信感の中で何十年も生活していけない」

言われてみると確かにそのとおりだと、たけしも思った

見合い結婚の嫁さんに未練は無い

養育費だけでも支払いが毎月10万円だ

手取りが25万ほどのたけしには重すぎるぐらいの重荷が今日の8万負けとあわさってたけしの肩にのしかかってくる

「やっぱり今日はスロットだったな」

たけしはいつものコンビニで弁当とスロット雑誌を買って帰る途中、そう思った