カジノで起こったとある日常を描いた衝撃のノンフィクション!

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 「雨は夜更け過ぎに...」
 
私が彼を見つけたのは、クリスマスも差し迫るとある夜の出来事です。

オムニカジノで何気無く観戦しようと思ったテーブルにいたベンと名乗る彼は、私が見始めたときには既に100ドルずつベットしてました。バンクロールは500ドルほどです。

その時点でベンは相当熱くなってたのでしょう。500ドルしかないのに100ドルずつ張ってるようでは真のギャンブラーとは言えないというのが私の持論です。どうせすぐに底をつくだろうと思ってたかをくくって見ていたら、あれよあれよという間にバンクロール1800ドル。

ここから大勝負に行くかと思いきや、なんとベンは5ドルずつベットし始めました。私は彼の器の大きさも知れたものだなと思い、この時、正直内心では彼が負けることを期待していました。

その後負けた時は大きく張り、勝った時は現状維持というありきたりの張り方をしながら気が付けば、バンクロール2000ドル突破...
なぜか増えてます。私はベンの鬼のような強運に少なからず嫉妬を覚えました。

勝負を関係のないところで見てる私としては、せめてこの辺で少しでも大きく張って欲しいのですが、ベンはそんな期待を裏切るかのように5ドルベット再開。

失望という言葉を口にしかけたその時。やってくれました。とうとうベンがやってくれました...

いきなりの200ドルベットです。

「おいベン。さっきの5ドルベットは何だったんだい。」
と心の中で叫びましたが、これで俄然おもしろくなってきました。

で、その200ドルベットですが、あっさりバースト...
ベンの「Oh! No!」と言う声が私にも聞こえてきました。

彼の次の挙動が大いに気になります。
そして、なんとベンはテーブルマックスの400ドルベット!
そうです、これです。まさにこれを待ってたんです。ようやくベンにも私の熱い思いが伝わったようです。
 
しかも、なんとベンはこれに勝利します。バンクロールは2200ドル突破です。

問題はこの後です。ここで辞めてしまったら所詮ベンはそこまでの男だったという判断を私は下すでしょうが、いやいやベンは違いました。

引き続き400ドルベット続行!しかもブラックジャックゲット!!!
バンクロールは2800ドルを超えました。この時点で既に私は彼を応援するファンの一人に変わっていたと思います。

が、なんとここでベンがいなくなりました。3000ドル突破を目前に控えた大事な時だというのに...ベンは満足して辞めてしまったのでしょうか...

と思いきやなんと隣のマックスベットが1000ドルのテーブルでベン発見!

しかもバンクロールが2200ドルに減ってます。見てないうちに負けてしまったのでしょう。だが、さすがはベン。ちょっとの負けではへこたれません。

起死回生の800ドルベット敢行です!

「やったよ!ベン!」

ベンの手に汗握る様子が遠く離れた私にも伝わってきます。

しかし運命とは皮肉なもので、そんなベンをあざ笑うかのようにディーラがまさかのブラックジャック...

世界中の多くの発展途上国における一人当たりの年間GNPを大きく超えるであろう800ドルという額がものの数秒で消えていきました。

今思えばここがいわゆる勝負分かれ目だったのでしょう。物事の分かれ目というのはそんな何気無いところに潜んでいるものです。

その後もあきらめずに400ドルベットを続けるベンに対してことごとく20を引き続けるディーラーによって、あえなくバンクロールゼロ...
果たして終わりとはこうもあっさりと訪れる物なのでしょうか。彼の熱い思いを理解する一人としては、あまりにも残酷で突然すぎる出来事で、とうてい受け入れられる物ではありません。

しかしベンは、そんな私とは正反対にすべてを悟ったかのようにニヤリと笑っただけで静かにテーブルを後にして行った事でしょう。

結局負けはしたものの、ベンのその熱い血のたぎりと彼が持つ男気(おとこぎ)は遠い異国の地にいる私にもしっかりと伝わってきました。体に熱いものが込み上げて来て、それでいてすがすがしいような、そんな感覚を思い出させてくれた彼の行動は決して無駄になるものではありません。

ありがとうベン、そしてさようなら。君のことは忘れない。

最後にひとつだけ贅沢を言わせてもらえるなら、彼と彼の帰りを待っているであろうファミリーがよきクリスマスを過ごせますように...